車と家の関係の始まり 車と家の関係の始まり

車と家の関係の始まり

コネクテッドカー、スマートホーム、そしてスマートフォンがバーに入っていく……これからオタク的な技術ジョークが始まる訳ではありません。あらゆるもの同士がつながるための一歩として、サムスン電子と現代自動車グループが、車がスマートホームと会話をする新しいライフスタイルの未来を創造するために提携したという最近の発表があります。どういうこと?と思いますか?

技術オタクではなく、新技術のアーリーアダプターでもない私たちのために、順を追って考えてみましょう。

スマートホームとは?

家庭にあるデジタル機器、家電製品、コントローラー、スイッチなどを思い浮かべてください。近年、これらの機器はますますスマートホームのエコシステムの一部となっていることに気づくでしょう。テレビ、スピーカー、玄関チャイム、エアコンのコントローラー、冷蔵庫など、数え上げればきりがありません。まず、これらのデバイスはインターネットに接続できるようになりました。しかし、単に接続性だけでなく、「スマート」なところは、センサーを活用してローカルデータをリアルタイムで収集し、インターネットからの無限のデータと組み合わせて賢く行動するということです。その結果、彼らはイケてるもの、便利なもの、単に奇妙なだけのものなど、多くの新しい技を習得します。例えば自宅の洗濯機は、投入された洗濯物の種類と量がわかるとその情報を乾燥機に伝え、この洗濯物を乾燥させるのに最適なプログラムを自動で設定します。照明のスイッチは私の照明の好みを知っていて、毎晩、日没の直前に完璧な組み合わせの照明がつきます。離れていてもスマホのアプリからドアの開錠ができます。嵐が来るのを事前に予測し、自動で窓のシャッターが下ります。これらのスマートデバイスやスイッチはすべてワイヤレスでインターネットに接続され、最終的にはスマートフォンで簡単にアクセスできるアプリに接続されています。

テクノロジー愛好家向けのニッチな市場のように聞こえるかもしれませんが、決してそうではありません。例えばグーグル、アマゾン、アップル、サムスンなど、ハイテク業界の大企業がスマートホームやスマートデバイスに多大な投資を行っています。以前は、スマートホーム技術は高価で導入するには複雑なものでしたが、現在では主流になりつつあります。

スマートカーとは?

ソフトウェア・デファインド・ビークルという単語を耳にしたことがあるでしょうか。ModelSの登場で、2012年にTeslaがこのコンセプトを普及させたといっていいでしょう。簡単に言えば、車のハードウェアとソフトウェアを切り離すことで、自動車メーカーは車のライフを通じて定期的にソフトウェアを更新し続けることができるということです。問題の修正だけでなく、性能の向上、新機能の追加、新機能の導入も可能です。最近では、スマートフォンだけでなくインターネットにも接続された車が主流になってきています。ドライバーはストリーミング音楽、ポッドキャスト、オンラインラジオを聴くことができ、同乗者はビデオをストリーミング再生したり、オンラインビデオゲームで遊ぶことができます。そして、「リコール」の概念は完全に変わりました。かつては、安全上の問題を解決するためのリコールといえば、サービスセンターまで車を走らせ、ドライバーにとってはあまり楽しい経験ではないですが、整備士が部品を交換するまで数時間待つものでした。何百万ドルあるいはそれ以上ものコストがOEMに発生することは言うまでもありませんが、今日のリコールは、スマートフォンの定期的な更新のように、オーバージエア(OTA)アップデートで行われています。

さて、スマートホームとスマート/コネクテッドカーという2つの分野を理解したところで、最新の状況に話を戻しましょう。この2つの分野が出合い、少なくとも、交流が始まっているといえます。サムスンと現代自動車が先行者になっていますが、この流れは他のプレーヤーも必ず取り入れることでしょう。具体的には、サムスンと現代自動車は、新しい消費者向けサービスを提供するために、スマートホームとコネクテッドカー間の双方向通信を発表しました。

ホーム・トゥ・カーサービス

車のオーナーは、スマートホームのアプリを使って、車のエンジンをかけたり、車内温度の管理、窓の開閉、充電状況の確認など、自宅から車をコントロールできるようになります。これはコネクテッドカーのOEMアプリでも可能ですが、2つのエコシステムを組み合わせた新しいユースケースについて考えてみましょう。寒い日にスマートホームアプリでホームステータスを「留守」に設定すれば、車は自動的にドライブの準備と暖房の開始を指示されたと理解します。

カー・トゥ・ホームサービス

裏を返せば、車が家の中の機能をコントロールすることもできます。車載インフォテインメント・ディスプレイは、家の照明や温度をコントロールできるようになります。また別の、スマートなシナリオもあります。例えば、予期せぬ渋滞で帰宅が45分遅れるような場合、車が家の空調スケジュールを自動的に調整してエネルギーを節約することができます。また、EVのバッテリー残量や走行可能距離をテレビや家にあるスマート・ディスプレイに表示するなど、車両情報を共有して家にあるデバイスに表示することもできます。

では、なぜ心配するのでしょう?

一言で言えば、サイバーセキュリティです。コネクテッドカーはサイバー攻撃の標的になりつつあります。自動車がより多くのソフトウェアを搭載し、携帯電話、無線LAN、ブルートゥースなど複数の接続チャンネルを提供するようになるにつれ、意図せず新たな攻撃ベクトルが生まれています。自動車のサイバーセキュリティが業界で最初に注目されたのは、2015年に起こった有名なジープ・チェロキーのリサーチャーによるハッキングでした。

自動車へのサイバー攻撃、公表されたリスクや脆弱性は増加の一途をたどり、ついに自動車サイバーセキュリティ規制につながり、特に有名なものにUNECE R155規制、国際標準ISO/SAE 21434があります。

技術的に言えば、スマートホームのエコシステムを車に接続することは、まったく新しい攻撃ベクトルを導入することになります。大きいというよりも非常に巨大なものです。厳しい規制があり、品質と安全性の高い基準が設定されている自動車業界とは異なり、スマートホームデバイスはまだそこに至っていません。スマートデバイスのサイバーセキュリティへの対応は始まったばかりであり、無数のベンダーが製造したスマートデバイスが安価に普及するにつれ、スマートホームのエコシステムのサイバー態勢を評価することはかなり不可能になっています。脆弱性に関するニュースの報道から判断すると、素晴らしいとは言い難いのです。よく知られているRingセキュリティカメラは2019年にハッキングされ、顧客を危険にさらしました。より最近のカメラのセキュリティ報道は、Wyzeウェブカメラに関わるもので、自分のものではない知らないカメラからの映像フィードを短期間見ることができたと報告した所有者がいたため、ニューヨークタイムズのWirecutterは6年間のレビューの後、Wyzeセキュリティカメラの推奨を取り下げました。しかし、スマートホームのセキュリティに関する懸念はウェブカメラだけではありません。リサーチャーたちは、スマート電球でさえハッキングされる可能性があり、ハッカーはそこから自宅のWi-Fiネットワークに侵入し、個人情報を盗むことができることがわかりました。

最近の調査で、Z世代とミレニアル世代がスマートホームデバイスがハッキングされることを非常に心配していることが示されたのは驚くべきことではありません。正直なところ、15ドルのスマートカメラに、どれだけのセキュリティ上の対策やサイバー保護が施されていると思いますか?そして、ホームネットワーク全体をハッキングするのは、たった1つの弱いリンク、保護が不十分なスマートデバイスが1つあれば十分なのです。

無数のベンダーが製造し、サイバーセキュリティに関する規制がまだない、オンライン・スマートホームデバイス、家電製品、スイッチといった新しいエコシステムを、あなた自身とあなたの親しい人を乗せておよそ時速120㎞で移動する車に接続した場合の結果を想像してみてください。何か問題となりそうなことはあるでしょうか?

一例として、脆弱性を利用してコネクテッドホームのスマート電球をハッキングし、そこから車にアクセスしてコックピットのスマート・アシスタントに車の機能を操作するよう指示することで、コネクテッドカーを遠隔操作することです。あるいは、車で向かった詳細な行先、そこで何分過ごしたかといった個人情報にアクセスして盗むこともできます。これがホーム・トゥ・カーのベクトルです。では、カー・トゥ・ホームのベクトルも考えてみましょう。ハッカーがコネクテッドカーを侵害できれば、車両レベルでの被害だけでなく、ハッカーの潜在的な攻撃範囲は家にまで広がることになります。ハッカーは、自宅のカメラにアクセスしたり、スマートロック搭載のドアを解錠したり、エアコンを操作したり、その他のスマートデバイスを操作したりする可能性があります。

どんな対策が可能?

自動車を家やデジタルライフの続きとするジャーニーは少し前から始まっており、スマートホームのエコシステムとコネクテッドカーの連携は必須になるでしょう。なぜなら新しいライフスタイルを形成し、車のユーザー体験を革新する可能性を秘めているからです。しかし同時に、この進化を誰にとっても安全なものにするために対処しなければならない、重大なサイバーセキュリティ・リスクがあります。このことは、自動車のサイバーセキュリティの重要性をさらに強調するものです。イーサネット向け侵入検知CANバス向け侵入検知による車載ネットワークの保護から、インフォテインメント・システムやテレマティック・ユニットなどのホストECUのハードニングと保護脆弱性の継続的なスキャン、攻撃を検知してリスクや脅威に対応するためのフリート・サイバー・モニタリングまで必要です。

まとめ

コネクテッドカー、スマートホーム、そしてスマートフォンがバーに入っていく…このジョークがサイバーによる悲惨な結末を迎えることを望まないのであれば、自分の乗る車が適切なサイバー保護対策を備えていることを確認したほうがいいでしょう。